【最新版】2022 Food Codeの改正点を解説!

Food Codeの改正点を解説

新しいFood Codeが発表されたけど、なにが変わったのだろう?

Food Codeは最新の科学的知見を取り入れるため、4年に一度新しいバージョンが発行されます。現在は2022年度版が最新です。

「前回からなにが変わったの?」「重要な改正点だけ知りたい!」という人も多いと思います。そんな疑問にお答えできるよう、この記事では2022年度版Food Codeの変更点についてわかりやすく解説します。

参考にした文献は「Summary of Changes in the 2022 FDA Food Code」です。かなりのボリュームですので、改正内容すべてをカバーするのではなく、重要な点のみを抜粋して解説します。

もしFood Codeについてあまり詳しくない方は下の記事を先に読んでください。

それではさっそく見ていきましょう。

この記事でわかること

  • 2022年度版の重要な変更点4つを紹介!
  • 変更の背景についても説明しています。
目次

手洗い用シンクに供給される水の基準が38℃から29.4℃に引き下げ

まずはFood Codeの実際の記載内容を紹介します。

手洗い用シンクは、混合バルブまたは混合水栓を通じて少なくとも 29.4℃の温水を供給するように設置すること

(記載箇所:Food Code 5-202.12 Handwashing Sink, Installation)

手洗い用シンクの水温について、最低29.4℃の温水を供給できること、と変更されました。2001年度版で 43℃から38℃に、2022年度版で38℃から29.4℃に変更されています。徐々に低い温度の温水でも可能となっています。

hand washing sink

手洗いは、食中毒を予防するために重要です。そのため、手洗い用シンクの水温は以前から議論されており、以下の3点が手洗い用シンクで特定の温度の温水を求める根拠だったようです。

  1. 温水は、従業員に手洗いを促すのに適してる。
  2. 温水は、汚れを落とす効果が高い。
  3. ASTM規格(世界最大規模の標準化団体であるASTM Internationalが策定・発行する規格)では、石けんの効果をテストする際、37.8~42.2℃の温水を要求している。

しかし、高すぎる水温は肌に損傷を生じる恐れがあるとも言われており、温水で手洗いする科学的根拠は乏しいようです。また、4.4℃~49℃の水温で手洗いを行ったところ、水温による菌除去の効果に差はなかったとの報告もあります。このような背景もあり、ようやく今回の改正に至ったと思われます。

ちなみに、今回引き下げられた「29.4℃」の温度については「Uniform Plumbing Code」を根拠としているようです。Uniform Plumbing Codeは、国際配管・機械協会によって定められた配管関係の標準規格です。

Food Codeの該当する部分の解釈について、1つ注意点があります。

Food Codeでは、手洗い用シンクで最低29.4℃の温水を供給できればよく、手洗いを必ず29.4℃以上の温水で行わなければならないとはなっていないことです。

手洗いのやり方は、実はFood Codeの別の場所に書かれています。

食品取扱者は、手および腕の露出部分を洗浄するために、次の手順で洗浄しなければならない。

(1) きれいで温かい流水で手をすすぐ。

(以下略)

(記載箇所:Food Code 2-301.12 Cleaning Procedure)

上記のように「温かい流水で手をすすぐ」となっており、特定の温度は書かれていません。FDAも、手を洗う温水の水温については、柔軟性を持たせていると述べています

ペットの犬を屋外の飲食スペースに持ち込むことが可能に

(A) 本条(B)、(C)および(D)に定める場合を除き、生きた動物を飲食店の敷地内に入れることはできない。

(B)、(C)、(D)(略)

(D) 規制当局が承認した場合、食品営業施設は屋外の飲食エリアに、ペットの犬の持ち込みを許可することができる。

(記載箇所:Food Code 6-501.115 Prohibiting Animals)

原則、生きた動物を食品営業施設の敷地内に持ち込むことはできません。ただし、盲導犬といったサービスアニマル(障害者を支援する事をトレーニングされた動物)などの一部の動物は、食品営業施設内に連れていくことが認められていました。

walking with guide dog

今回の改正で、規制当局の承認が得られれば食品営業施設は屋外の飲食スペースに顧客がペットの犬を連れていくことを許可できるようになりました。

このようにFood Codeに明記されましたが、いくつか注意点があります。

まず、Food Codeはガイドラインであるため、州法などが優先されます。そのため、それらの法律で禁止されている場合、愛犬の同伴は禁止されたままです。

また、介助犬や医療補助犬に関する合理的配慮の法的要件に抵触しない限り、食品事業者が引き続き、顧客が犬を施設内に持ち込むことを禁止することは可能です。

最後に、猫などの他のペットについては、原則禁止されたままです。

食物アレルゲンに関するいくつかの変更点

主要な食物アレルゲンにゴマが追加


(1) 「主要な食物アレルゲン」とは、以下のものをいう:
(a) 乳、卵、魚(バス、ヒラメ、タラ、およびカニ、ロブスター、エビなどの甲殻類)、木の実(アーモンド、ピーカン、クルミなど)、小麦、ピーナッツ、大豆、ゴマ

(b) (a)で示した食品に由来するタンパク質を含む原料

(記載箇所:Food Code 1-201.10 Statement of Application and Listing of Terms. (B) Major Food Allergen.)

ゴマが主要な食物アレルゲンに追加されました。これにより、主要な食物アレルゲンは以下の9種に。主要な食物アレルゲン含む食品は、アレルギー表示が必要になります。

①乳、②卵、③魚(バス、ヒラメ、タラなど)、④甲殻類(カニ、ロブスター、エビなど)、⑤木の実(アーモンド、ピーカン、クルミなど)、⑥小麦、⑦ピーナツ、⑧大豆、⑨ゴマ(2023年1月1日から)

sesame

包装されていない食品、量り売りの食物アレルゲンの情報伝達

①消費者に提供または販売される包装されていない食品に含まれる主要な食物アレルゲンについて、消費者へ書面で通知しなければならない。

②セルフディスペンサーでの量り売りの際、主要なアレルゲンを表示しなければならない。

(記載箇所:①Food Code 3-602.12 Other Forms of Information、 ②3-602.11 Food Labels.(C))

①について

包装されていない食品には、テイクアウトなどで、注文の後に食品を入れる簡易的な容器に入れられた食品も含まれます。今回の改正で、食品営業施設で提供、販売される、包装されていない食品について、主要な食物アレルゲンを消費者に書面で伝えなくてはならなくなりました。

書面での通知方法は、物理的または電子的な手段があり、パンフレット、冷蔵ケース、メニュー、ラベル、テーブルテント(卓上POP)などがあるようです。また、これらの方法に限られるわけではなく、別の効果的な方法でもよいとなっています。(参考:FDA Food Code 2022 Annex 3. Food Labels and Other Forms of Information

②について

セルフディスペンサーでの量り売りというのは、下の写真のような、アメリカのスーパーでよくある量り売りのことです。

bulk dispenser
(写真:https://www.flickr.com/photos/wonderlane/49687388576)

商品名や原材料などに加え、今回主要な食物アレルゲンの表示が義務付けられました。

表示方法はカードや標識など、消費者が容易に確認することができる方法となっています。

この項目については、サラダバーやビュッフェなど、消費者自身がサーブするものも含まれるかもしれないから管轄の規制当局に解釈をよく確認すること、と言っている記事もありました。


従業員に対する食物アレルゲンに関する訓練

責任者は従業員に対し、食物アレルゲンを含めた食品安全について、職務に応じた適切な訓練を行わなければならない。

従業員は食物アレルゲンに関し、主要な食物アレルゲンについて、そしてアレルギーの症状について説明できなければならない。

(記載箇所:Food Code 2-103.11 Person in Charge (O))

ひとつ前の2017 Food Codeでは、「責任者は従業員に対し、食物アレルゲンを含めた食品安全について、職務に応じた適切な訓練を行わなければならない。」の部分だけしかありませんでした。それが、2020 Food Codeでは、後半部分が追加されたということです。

今回の改正で、責任者が従業員に対し、食物アレルギーについて、どのような訓練を行わなければならないかが、具体的に示されました。

つまり、行う作業に応じて従業員は「主要な食物アレルゲン9種」と、「食物アレルギーの症状」を理解していなければならない、ということです。

食品の寄付(Food donaiton)の明記

法律およびFood Codeに従って保存、調理、包装、陳列、ラベル付けされた食品は、寄付のために提供することができる。

(記載箇所:Food Code 3-204 Food Donation)

Food Codeに「食品の寄付(Food donation)」の項目が追加されました。以前から禁止されていたわけではないのですが、適切に扱われた食品であれば、飲食店や小売店からの食品寄付も認めることを初めて明記しました。

今回の追記は、飲食店や小売店が食品の寄付をより行いやすくすることを目的としています。

Food bank

食品寄付を推奨することで、食品廃棄に関する課題を解決する

食品寄付に関する項目の追加の背景には、バイデン政権の「飢餓、栄養、健康に関する国家戦略」(2022年9月発表)があります。この国家戦略は、2030年までに飢餓をなくし、食事に関連する病気を減らすため、連邦政府が取るべき行動のロードマップを示しています。

米国では、年間30~40%の食品が廃棄されていると推定されています。2010年には、重さで約1330億ポンド(計算すると6,030万トンくらいでしょうか。)、1610億ドル相当の食品が廃棄されたと推計されています。

食品を廃棄するということは、地方自治体の廃棄物の埋立地を圧迫することになります。また、食べるものがなくて困っている家庭を助けることができたかもしれません。さらに、廃棄される食品の生産に使用された水、エネルギー、労働力は、他の目的に使用することができたかもしれません。(参考:FDA Food Code 2022 Annex 3. 3-204.10 Food Donation

食品寄付はこのような食品廃棄に関する課題を解決する手段になると考えられています。

Food Donation Improvement Actにより法的保護が拡大

話は少し変わりますが、企業が食品寄付をためらう理由として、寄付した食品で食中毒などの問題が起こった際の影響があります。

実は、アメリカにおいて食品寄付は、「Bill Emerson Good Samaritan Food Donation Act(善きサマリア人の法)」により、すでに法的保護の対象になっています。つまり、重過失や意図的な違法行為がない限り、善意で食品を寄付したことから生じる民事・刑事責任を問われません。

この法は、食品を寄付する個人、非営利団体にとって重要なものでした。しかし、法の文言に不明確な部分があり、多くの企業は寄付した食品で問題が起こった場合の訴訟のリスクを恐れ、寄付するよりも廃棄した方がよいという判断になっていました。

そのような背景があったため、「善きサマリア人の法」の法的保護の範囲を拡大する「Food Donation Improvement Act(食品寄付を改善する法律)」が2023年1月にバイデン大統領によって承認されました。この新しい法律は、以下の2点について、食品寄付にかかわる法的保護を拡大しました。

  1. 小売店、卸売業者、農業生産者、農業加工業者、流通業者、レストラン、ケータリング業者、給食施設が、余剰食品を困窮者に直接寄付する際の法的保護を与える。
    (善きサマリア人の法では、非営利団体を通じた食品寄付にだけ、このような法的保護が適用されていました。)
  2. 食品の取り扱い、管理、配布のコストといった実費分を含んだ価格で販売した場合であっても、法的責任の保護を認める。
    (善きサマリア人の法では、余剰食品を無償で提供する場合のみ法的保護の対象でした。)

Food Codeの改正、そしてFood Donation Improvement Actにより、アメリカでは今後、飲食店や小売業からの食品寄付が増加することが期待されています。


改正点だけ見ても、アメリカの食品安全がどのような方向に向かっているのかを知ることができますね。

Food Codeは食品事業者が順守しなければいけない内容ががかなり具体的に書いています。そのため、日本で営業している飲食店、小売業の方にとっても、参考になることが多く書いてありますので参考にしてみてください。

Food Codeに実際に何が書かれているのか、Food Codeについてあまり詳しくないという方は、下の記事も読んでみてください。

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