食品関係者は全員見るべきドキュメンタリーを紹介

食品関係者は全員見てほしいドキュメンタリーを紹介

現在アメリカでは、マクドナルドの「クォーターパウンダー」に含まれていたタマネギを原因とする腸管出血性大腸菌O157食中毒が大きな話題となっています。

Quarter Pounder hamburger
画像:CDC

このニュースは連日メディアに取り挙げられており、その際に近年発生した食中毒やリコールなどを引き合いに出し、アメリカの食品安全システムの欠陥が指摘されています。

はたして、本当にアメリカの食品安全システムに問題はあるのでしょうか?あるとすれば、それはどういった問題なのでしょうか?

そのような疑問に答えるため、この記事ではNetflixのオリジナルドキュメンタリー「ポイズニング: 食に潜む汚れた真実」(2023年公開、原題:Poisoned: The Dirty Truth About Your Food)を紹介します。

このドキュメンタリーは、食中毒事件の被害者や専門家のインタビューを交えながら、アメリカの食品安全システムの問題点を浮き彫りにしています。

アメリカを舞台にした話ですが、日本においても共通点や学ぶべき点が多くあります。

消費者はもちろんですが、食品事業者と行政関係者は必ず見るべき作品だと思います。

目次

「ポイズニング: 食に潜む汚れた真実」のレビュー

この作品では、アメリカの食品安全システムの問題点を指摘するにあたって、過去にアメリカで発生した重要な食中毒をいくつか紹介しています。

これらは食中毒はアメリカの食品安全のターニングポイントとなっています。

この作品では、これらの食中毒を紹介するにあたり、食中毒の被害者やその家族の実際の映像が収録されています。

通常、政府の統計資料や保健所の発表資料では、「患者:〇人、入院〇人、死亡:〇人」といった合計値が書かれます。

しかし、実際の映像を見ることで、文字や数字だけでは伝わらない、患者一人一人が直面した食中毒の本当の恐ろしさを知ることができます。

食中毒が人々の健康や人生、時には命を奪う深刻な問題であることを改めて認識させられました。


またこの作品は、食品安全に関する問題点を単に指摘するだけでなく、その原因や背景についても深く掘り下げ、食品業界の闇を暴くような内容となっています。

多くの専門家や内部告発者が実名で登場し、食品の汚染が起きる原因、企業の利益優先の姿勢、政府の規制の不十分さなど、私たちの食卓を脅かす様々な要因について証言しており、説得力があります。

一方で、単に問題点を指摘するだけでなく、消費者としての私たちがどのようなことに注意すべきか、また、政府や企業がどのような対策を取らなければならないかなど、具体的な提言も含まれています。


私が特に印象的だった内容は次の点です。

1993年のジャック・イン・ザ・ボックスでのハンバーガーパティの事故の後、政府と食品業界の取り組みによりパティの安全性は格段に向上しました。

そのため、現在ハンバーガーで最も危険な食材は「パティ」ではなく、レタス、トマト、タマネギであると指摘しています。

これを聞いて、現在起こっているマクドナルドでの食中毒は、偶然ではなく、必然なのだと理解しました。

patties

これ以上はネタバレになってしまうためやめておきます。後はご自身でこの作品をご覧ください。

アメリカの食品は危険になったのか?

この作品を見ると、アメリカの食品安全システムに深刻な問題があることが分かります。

しかし、約30年前にジャック・イン・ザ・ボックスでのO157食中毒が発生した頃と比べて、アメリカの食品は「より危険に」なっているのでしょうか。

ここでは専門家の意見をいくつか紹介します。

“Just because we have the ability to see disease, that doesn’t mean that this disease doesn’t happen in other countries. We are just further along in that technological ability to find and track and identify these types of issues compared to other places.”

「我々が病気を発見する能力を持っているからといって、その病気が他の国で起こらないということにはなりません。我々は、この種の問題を発見し、追跡し、特定する技術的能力において、他の国よりも進んでいるだけなのです」

Martin Bucknavage (USA TODAY, 2024/10/28)

The outbreak of listeria, a highly deadly pathogen, from Colorado cantaloupe shipped across the country in 2011, was detected and rapidly traced to the source, preventing a tragic 33 deaths from mushrooming much further, Scallan Walter said. “So we have this problem that we’ve created with more widely dispersed food, but we’ve also gotten much better at detecting those outbreaks.”

2011年に発生した全国に出荷されたコロラド産メロンによるリステリア食中毒では、探知し、迅速に発生源まで遡ることができ、悲劇的な33人の死者がそれ以上増えるのを防ぐことができました、と Scallan Walterは言います。「より広範囲に食品が流通することによる問題が起きていますが、そのような食中毒を探知する能力も格段に向上しています」。

Scallan Walter (University of Colorado, 2023/9/14)

私もこの意見に賛成です。

アメリカはこの30年間多くの重大な食中毒の発生を受け、その度に食品安全システムの改善を行ってきました。

それにより、より少ない人数であっても、そしてより広域であっても食中毒を探知し、調査する体制を確立しています。

以前は食中毒が起こっていることすら気がつかなかったものを、現在はそれを探知し明らかにできるようになりました。

それにより、食中毒の発生がニュースになり、より多くの世間の関心を集めるようになっています。

検査感度が良くなっため、より多くの病気を検出することができるようになったということです。


それでは日本はどうでしょうか。

30年前と比べて、私たちの食品は安全になっているのでしょうか。

日本において、ハンバーガーに使われたタマネギが原因の広域の食中毒が発生した際、私たちはそれを食中毒と気が付くことができるのでしょうか。

これについて私自身明確に答えることはできません。

しかし、アメリカの過去の失敗から学んだ取り組みを日本にも取り入れることで、私たちの食品安全システムは向上すると信じています。

おわりに

以上がNetflixのドキュメンタリー「ポイズニング: 食に潜む汚れた真実」の紹介です。

日本では食中毒患者やその家族一人一人の話を聞いたり、見たりする機会はありません。

そのため、日本においてもこのような作品が作られ、食中毒の悲劇について当事者やその家族からストーリーを聞くことは、食品に関わるすべての人たちの意識と行動を変える上で非常に大切だと思います。

また、動画を見ると、食品事業者や行政担当者がかなり悪者のように描かれています。

しかし、日本で私がお会いした食品安全にかかわる人たちは、皆さん消費者のことを考え、真摯に食品安全に取り組んでいます。

だからこそ食中毒を起こさないために、日本だけでなく海外の新しい情報を日々取り入れ、自分の施設の食品安全を向上してもらえればと思います。

私の家族はこのドキュメンタリーを見た後に、「袋入りサラダと鶏肉が食べられない」と言っていました。皆さんはどのような感想を持ちましたか?

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