配達サービスは安全?FDAがフードデリバリーのガイドラインを発表

配達サービスは安全?FDAがフードデリバリーのガイドラインを発表

フードデリバリーやネットスーパーでの宅配サービスが一般的になったね。これらの食品はどのような安全対策が取られているのだろう?

コロナ禍の影響で一気に普及したサービスですね。最近FDAが新しいガイドラインを発表したので紹介します。

コロナウイルス感染症の影響もあり、近年ウーバーイーツといった配達サービスやネットスーパーでの宅配が一般的になりました。

このような新しいサービスが急速に拡大すると、法整備がされていなかったり、不慣れな食品事業者も参入するため、安全対策に不安があります。

アメリカでも同様な状況です。そのため、このような新しいサービスの衛生管理について、FDAが新しいガイドラインを発表しました(2022年12月)。

今回は、このガイドラインを解説します。日本で同様のサービスを利用する食品営業者の方も参考にしてみてください。

目次

ガイドラインが出された背景

そもそもこのガイドラインが出された背景は何なのでしょうか。

皆さんは「New Era of Smarter Food Safety(よりスマートな食品安全の新時代)」を知っていますか。これは、新しい技術を活用することで、より安全で、よりデジタル化され、よりトレーサブル(追跡可能)な食品安全システムを構築するためのFDAの取り組みです。

FDAは2020年7月に「New Era of Smarter Food Safety」の10年間の詳細な計画を発表しました。計画の中で食中毒を減らすための4つの中心的な要素(Core Element)が示されています。

「New Era of Smarter Food Safety」の4つの中心的な要素

  1. 技術を活用したトレーサビリティ
  2. よりスマートなツールと手法を用いた食中毒の予防と対応
  3. 新しいビジネスモデルと小売業の近代化
  4. 食品安全文化

この中の「3. 新しいビジネスモデルと小売業の近代化」について中身を詳しく見ていきます。

技術革新やコロナウイルスのまん延などにより、私たちの生活様式は大きく変化しました。それに伴い、従来とは異なるビジネスモデルが浸透しました。例えば、Eコマース(ネットショッピング、ミールキットのサブスクなど)や新しい配達方法(ウーバーイーツなど)です。

このような新しいビジネスモデルは、従来の食品の流通とは異なります。そのため、今まで想定していなかったような食品のリスクが生じる恐れがあります。

そのような新しいリスクに対応するため、「New Era of Smarter Food Safety」の「3. 新しいビジネスモデルと小売業の近代化」の中に次の2点が書かれています。

  1. 他の規制当局と連携して、米国食品安全強化法(FSMA)の対象になっていない新しいビジネスモデルに対処する。
  2. 食品配達会社と連携し、配達される食品の適切な取り扱いについて教育を実施する。

まず一つ目について。今回FDAはUSDA、CDCといった他の規制当局と連携してガイドラインを出しています(「他の規制当局と連携して」の部分)。

また、Eコマースのような食品事業者から直接消費者に製品を販売するビジネスモデルは小売業に分類されるため、FDAの規制管轄外になります。(「米国食品安全強化法(FSMA)の対象になっていない」の部分)

2つ目は、配達事業者へのアプローチです。まさに今回出されたガイドラインのことを示しています。

また、FDAは2021年10月に3日間の公開会議を行いました。会議のタイトルは「オンライン注文で消費者に直接届けられる食品の安全性を確保するためのEコマースに関するサミット」で、地方自治体、事業者、消費者などと、Eコマースの食品の安全性について意見交換を行っています。

このような背景があり、今回配達事業者向けに新たなガイドラインが出されました。

つまり、今回出されたガイドラインはFDAの「今後10年間かけて行う大きな取組の中の一つ」というイメージですね。

それでは、ガイドラインを見ていきましょう。

ガイドラインの対象となるビジネスモデル

このガイドラインでは「Direct to Consumer」と「Third-Party Delivery」の2種類のビジネスモデルを対象としています。

Direct to Consumer(消費者への直接販売)

インターネットや電話などを通じて注文された商品を、郵便、運送業者、自社物流網などを通じて消費者に直接届けるビジネス。

(例)メーカーが自社のECサイトから商品を直接消費者に販売する。通信販売。

Third-Party Delivery Service(第三者による配達サービス)

消費者が注文プラットフォームを通じて食品営業施設に注文を行い、配達員がその注文の配達を行うビジネス。

(例)Uber Eatsといった飲食店の料理を第三者が配達するサービス

この2種類のビジネスモデルは、流通の過程で複数の関係者が関与します。そのため、食品が最終消費者に安全に届けられるようにするために、関係者が協力して食品安全に取り組む必要があります。

例えば、どの段階で食品安全のリスクが発生するのか、そのリスクをコントロールするための対策は何か、その対策を実施するのは誰か、といったことを事前に決めておかなければなりません

また、食品を最終消費者に届ける方法は無数にあるため、食品安全管理に「一律」のベストな方法はありません

そのため、事業者はこのガイドラインを参考に、自社の業務に最も適した方法を研究し、理解し、試験する必要があります

今回は2種類のビジネスモデルのうち、「Third-Party Delivery Service(第三者による配達サービス)」を解説します。

Uber delivery

基本となる考え方

HACCPによりリスクを管理することを推奨

すべての段階(商品の保管、包装、ラベル付け、配達、消費者とのコミュニケーション)で、HACCPに基づきリスクを管理することが推奨されます。

HACCPで対策するにあたっては、第三者による配達の過程で発生するかもしれない「リスク」についても対応できるよう、配達時間、移動距離、配達ごとの注文数のほか、ガス欠、パンクといった想定外の事象についても考慮します。

第三者によるフードデリバリーを利用する際の注意点

A. 食品安全に関する責任の所在の明確化

  • すべての関係者が、食品安全に関するリスクを理解し、食品安全のリスクを最小にするために、それぞれの役割を明確にすること
  • 食品の準備、配達などそれぞれの段階において、だれが責任を持つのかを決めること

B. 汚染を防ぐ

  • 食品の汚染は生物学的、化学的、物理的汚染がある。
  • 生物学的汚染は、不適切な食品の保管、配送時の不適切な温度管理によって起こる。
  • 化学的汚染は、食品ではない製品(洗剤、衛生用品など)が食品と同じ袋に入れられる場合に起こる。
  • 物理的汚染は、食品が適切に包装されていない場合に起こる。
  • 事業者は汚染を防ぐため、食品をどのように分けるか、それぞれの食品をどのように包装するかを考えること。

食品営業施設では、商品をどう分けるか、商品をどう包装するかによって、汚染のリスクを最小限に抑えることができます。そのため、すぐに食べられる食品と生の食品(肉、魚など)を分ける、食品と食品でないもの(化学物質など)を分ける、ガラスなど壊れやすい食品を分けて破損のリスクを減らす、といったことを考慮しましょう。

また、配達員がどこまで何を準備するのか(例えば飲み物、食器、ナプキン、ストロー、調味料などはだれが準備し、包装に入れるのか)を決めておきましょう。

時間と温度による管理について

第三者の配達員を利用して消費者に食品を配達する場合、温度管理に注意する必要があります。

配達にあたり、さまざまな配達車両の使用が考えられます。冷蔵や冷凍車は、温度管理を維持する上で理想的です。しかし、配達車両に温度管理の機能がない場合、配達員は、断熱性のある配達用バッグや容器、保冷剤を使用し、食品安全上の懸念に対処しなければなりません。

注文プラットフォームの運営者は、配達員に対して、関連する食品安全の基準に従って配達できるようにするための情報を提供する必要があります。

また、注文プラットフォームの運営者、配達員、食品営業施設は、病原菌の増殖を防止するための適切な手順を開発するために協力する必要があります。配送時間が短い場合、時間が管理手段となります。しかし、配送時間が長い場合や食品を消費者に直接渡さない場合は、腐敗しやすい食品が適切な温度に保たれるようにするための追加の管理手段を検討する必要があります。

食品営業施設における温度のモニタリング

配達員に受け渡す前段階として、食品営業施設で保管されている製品についても、適切な温度で保管する必要があります。そのため、必要に応じて温度のモニタリングを行います。

包装

包装は、製品を汚染や外部環境、物理的なダメージから保護してくれます。

食品の包装容器

そのため、適切な包装材、複数の包装による保護により、リスクを最小限に抑えることができます。食品をアルミホイル、容器、プラスチックの袋などで包むことでの、食品を直接保護します。配送用バッグなどの三次包装は、極端な温度変化、直射日光、天候(雨や雪など)、道路の破片、動物や害虫などの外部環境から食品を保護します。

一次包装や二次包装は、再利用すべきではありません。一方、配送用バッグなどの三次包装は、配送に再利用するため、耐久性があり、容易に洗浄できる材料で作られている必要があります。

また、製品の破損や汚染を防ぐため、配達中の食品の正しい保管方法(どの面を上にして保管するなど)や、食品の量を決めておく必要があります。

意図的な異物混入への対策

食品営業施設は、配達中の食品の意図的な開封を防止するため、いったん開封すると再度留めることができないシール(改ざん防止シール)などを用いるべきです。

配達員は、消費者に届けるまで、食品を二次包装または三次包装から取り出してはいけません。また、配達員は、一次包装または二次包装を開封してはいけません。

配達用バッグの使用方法、メンテナンス、清潔さについて

配達員は、食品の温度変化を最小限に抑え、配達中に食品の温度を維持するため、必要に応じて断熱性能がある配達用バッグを使用しましょう。

配達用バッグ

また、氷、冷却剤なども使用し、長時間の配送中の製品温度の上昇を抑えることも望ましいです。断熱性がある配達用バッグを使用する必要があるかどうかは、配達時間、気温や気候、製品の温度に応じて判断します。

配達用バッグは、様々な用途に応じて設計されます。

そのため、バッグの材質、構造、デザインは、食品を熱いまま、または冷たいまま維持できるようカスタマイズすることができます。また、冷たい食品と熱い食品を分けて保管することができるデザインにすることも望ましいです。

注文プラットフォームの運営者または食品営業施設は、配達員の配達用バッグに関するルールを設定しましょう。ルールには以下の内容を含めます。

  • 配達用バッグやその他の包装の適切な選択方法について
  • 誰が配達用バッグや包装を提供するのか
  • 新しいバッグの提供や交換の方法や費用について
  • 提供された配達用バッグの使用が義務であるのか、それとも配達員が選ぶことができるのか

バッグは簡単に洗浄でき、清潔に保たれ、良好な状態で維持されることが望ましいです。バッグは毎日、または必要に応じてもっと頻繁に清掃する必要があります。

配達員は、汚染や害虫の侵入口につながる可能性のある裂け目、破れ、穴、食品の汚れなどがないか、バッグの状態を確認する必要があります。推奨される方法は、配達前後に配達バッグの状態をチェックし、こぼれや漏れがあった場合は清掃しましょう。

配達用車両の清掃と点検

配達には、配達場所やアクセス状況に応じて、様々な手段(徒歩、車、バイク、自転車、自動運転車、ドローンなど)が使用されます。

車両は清潔である必要があります。それに加え、臭い、害虫、動物および食品の安全性に悪影響を及ぼす可能性のある物質がないようにする必要があります。

配達員は、車両内部を点検し、清潔であること、ゴミがないことを確認するしましょう。注文プラットフォームの運営者は、車両を安全な状態に維持するために必要な情報(車両の清掃やメンテナンスなど)を配達員に提供しましょう。

C. 教育・訓練

注文プラットフォームの運営者は、配達員に対し、食品安全に関する教育・訓練を提供しましょう。教育・訓練は内部で実施するほか、外部のプログラムを利用することもできます。教育、訓練には以下の内容を含めます。

(a)汚染の防止

(b)製品を分けて保管すること

(c)温度管理

(d)個人の健康、個人衛生、手洗い

(e)製品への意図的な汚染の防止

(f)アレルゲン

(g)運送車両の清掃

(h)清潔で断熱性の高い配達用バッグの選択及び使用

上記の中でも、(a) 汚染の防止、(c) 温度管理、(d)個人の健康と個人衛生、は食中毒予防における重点分野となります。

汚染の防止
汚染は様々な形で起こりえます。配達員は以下の点に注意してください。
・配達員自身による汚染 ・ 配達に使用するバッグ、冷媒などによる汚染 ・ 外部環境による汚染 ・ 動物や害虫による汚染 ・ 配達方法による汚染

温度管理
配達員は、食品の適切な温度管理について知り、危険温度帯に食品を長時間保管することによる食品安全への影響を理解しなければなりません。
また、食品を適切な温度で保管するために必要な断熱性のあるバッグ、冷媒などの器具についての知識も必要です。

個人の健康
配達員は、体調が悪いときは働いてはいけません。また、配達員の家族が食中毒になっており、配達員自身も感染の恐れがある場合は食品を取り扱うべきではありません。
ウイルス、細菌などの微生物は、直接の接触や製品の容器包装を通して、病気の人から購入者に感染する可能性があります。

個人衛生
配達員は、きれいな作業服を着るなど、適切な個人衛生の重要性を理解しなければなりません。
配達員は次のことを知っている必要があります。
・適切な個人衛生 ・手洗いが必要な時、効果的な手洗いの方法 ・ 加熱しないで食べられる食品に素手で触れないようにする方法 ・(必要に応じて)提供された食器を使用して食品を取り扱う方法

上記のほかに、注文プラットフォームの運営者は、配達員が配達中に行う行動(飲食、ガムを噛む、タバコの利用など)に関し、基準を作成する必要があります。

D. 法令違反の管理

以下のように、法令違反が発覚した際や購入者からのフィードバックがあった際の対応方法をあらかじめ決めておく必要があります。

  • 法令違反や購入者からのフィードバックに対しどのように対応するか
  • 製品に問題があった場合、購入者に対しどのような対応を指示をするか
  • 誰が報告やフィードバックを受けるのか
  • 誰が報告やフィードバックを確認し、解決するのか

法令違反の例として以下のようなものがあります。

  • 食品の安全性:不適切な温度、アレルギー物質、食中毒の発生、異物の混入など
  • 食品の品質:破損、腐敗など
  • 間違った製品:アレルギー物質を含む恐れ
  • 配送:指定時間内に届かなかったなど

また、注文プラットフォームの運営者は以下のような状況になった際の対応方法(配達する、返品する、廃棄するなど)を指示する流れを事前に決めくことが重要です。

  • 配達員が正しい配達時間、場所に到着したが、購入者が不在である
  • パッケージが破れている、シールがはがされているなど、配達員以外の人による商品の改ざんの証拠がある
  • 商品に破損、漏れ、その他の汚染(例:髪の毛、汚れ、破片)がある

また、法令違反や購入者からのフィードバックへの対応が適切に行われているかを検証する必要があります。そのため、注文プラットフォームの運営者は必要に応じて、記録や報告書を確認するようにしてください。

E. その他の留意点

食物アレルギーについて

食品営業施設の厨房では数多くの原材料を扱います。また、作業は同じ作業台や器具が使われます。そのため、提供する食品がアレルギーフリーであると保証することは難しいです。厨房の運営者は、注文プラットフォームを通じて、施設におけるアレルギー対応状況を購入者に伝えてもよいかもしれません。

注文プラットフォームによっては、注文した商品が売り切れている際、代わりの商品を提案する機能があります。注文プラットフォームにそのような機能がある場合は、代わりの商品を選ぶことによるアレルギーのリスクについて、購入者に注意喚起するようにしてください。

トレーサビリティとリコールについて

食中毒やリコールが発生した場合、保健当局が食品の流通状況の調査を行います。そのため、注文プラットフォームの運営者は、行政からの問い合わせ(仕入れ元や販売先の情報)に対応できるような仕組みを整える必要があります。


以上がガイドラインの解説です。

飲食店、プラットフォームの運営者、配達員それぞれが協力して食品安全に取り組まなければならないこと、そしてそれぞれの配達方法に応じて自分たちでリスクを分析し、対策を考える必要があることが分かりましたね。

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