キッチンカーで食中毒が起こったというニュースを見たよ。職場の近くで多くキッチンカーが営業しているけど、衛生面は大丈夫なのかな?
アメリカではキッチンカーの数は、2011年に8,677台だったのが、2021年には32,287台と、10年間で3.7倍に増えています。
日本においても同様に、新型コロナウイルス感染症の拡大や初期費用の安さなどから、キッチンカーの台数は右肩上がりに増えています。
このように人気のキッチンカーですが、大規模な食中毒が発生しており、注意も必要です。
きちんとしたキッチンカーは、通常の飲食店と同じレベルの衛生管理を行っています。しかし、キッチンカー特有の環境により、「不衛生なキッチンカー」というのも存在します。
そこで、この記事ではHuffPostの記事を参考に、キッチンカーで食べ物を買う前にチェックすべき6つのポイントを紹介します。
オリジナルの記事はアメリカの状況を紹介していますが、日本の状況に置き換えて解説したいと思います。
なぜキッチンカーの衛生面が心配なのか
なぜキッチンカーは「通常の飲食店」に比べて衛生状態が悪くなる傾向があるのですか?
それには、キッチンカー特有の環境が影響しています。
具体的な例を見てみましょう。
衛生面に影響するキッチンカー特有の環境
- 狭いスペースで、1人が短時間に複数の作業を行う
- 生肉やお金を触った手で盛り付け行うと、二次汚染が起こる。
- 限られた設備、機械、生産能力
- 冷凍庫のスペースが少ない、シンクの数や大きさが限られる、エアコンがない、調理済みの食品を衛生的に保管しておくスペースがないなど。
- 移動中の振動による機器の故障、設備の破損
- 故障により冷蔵庫が使えなくなる、配管が水漏れするなど。
- 十分な量の衛生的な水の供給が難しい
- タンクの水が汚い、タンクの水の量に限りがあるため、衛生的な手洗いができない。
- きちんと手洗いが行えるトイレがない
- 営業場所の近くに、きちんとしたトイレがない場合、衛生的な手洗いができない。
例えば、夏場の営業を考えてみましょう。
多くのキッチンカーが営業する昼頃は、外気温が30℃を超えることも珍しくありません。
すると、もしキッチンカーにエアコンが設置されていない場合、車内の温度は細菌が最も増殖しやすい30~40℃になる恐れがあります。
空調が効いた飲食店であれば、1~2時間室温に放置していても問題がない食品でも、キッチンカーの場合、食中毒菌が一気に増殖してしまい食中毒になる恐れがあります。
また、アメリカの事例になりますが、保健所の立ち入り検査が通常の飲食店と異なる点も、キッチンカーが不衛生になる原因の一つと考えられています。
通常の飲食店の場合、保健所は事前通告なしで、飲食店が営業している最中に立ち入り検査を行います。これにより、従業員が実際に食品を取り扱っている状況を確認できます。
一方キッチンカーの場合、営業場所、時間が日々変わるため、事前通告なしでの立ち入り検査は困難です。そのため保健所は、事前に店主と日時を調整し、営業していない時間帯に立ち入り検査を行っています。
そのため、キッチンカーでは実際に従業員が食品を取り扱っている状況を保健所職員が確認することができません。
保健所が、実際の営業中に指導することが難しいのですね。
キッチンカーの実際の営業中に観察したところ、9割近いキッチンカーで「不適切な手洗い」が見られたと報告があります。
このように、キッチンカーは「通常の飲食店」より高いレベルの食品安全の知識、食品の取り扱いが必要です。
しかし、最近ではキッチンカーをレンタルするサービスが増えるなど、参入のハードルが下がっています。
そのため、消費者自身が「安全なキッチンカー」を選ぶ知識を身につける必要があります。
安全なキッチンカーを見分ける6つのポイント
ここからは、専門家がキッチンカーで購入する前に見る、「安全なキッチンカーを見分ける6つのポイント」を紹介します。
①外観と調理場が清潔
キッチンカーの外観や調理場の見た目がきれいだからと言って、必ずしも食品が安全であるわけではありません。
しかし、汚れのない窓、整理整頓された調理場、清潔な販売カウンターは、衛生面や定期的な清掃に気を配っていることを示しています。
②保健所の許可証を掲示している
キッチンカーは、通常の飲食店と同様に、保健所の検査を受け、営業許可を得る必要があります。
そして、許可を得たキッチンカーは、「営業許可証を利用者から見やすい場所に掲示すること」や「営業許可証を携行し、求めに応じて提示すること」が多くの自治体で義務になっています(例:神奈川県)。
そのため、もし営業許可証が見当たらない場合、きちんとした手続きをせずに営業している可能性があります。店主に営業許可証があるか確認してみましょう。
③従業員が保護具を着用している
ほとんどのキッチンカーは、外から調理している状況を見ることができます。そのため、窓越しに従業員がきちんと使い捨て手袋やエプロンを着用しているか見てみましょう。
特に、サンドイッチといった加熱工程がない食品を調理する際や盛り付けを行う際に、使い捨て手袋を着けているか注視してください。
また、従業員が生肉やお金を扱った後に、手袋を交換しているかも確認しましょう。
④適切な「手洗い設備」がある
さらに、調理場内に「専用の手洗い設備」があるかどうかも見てみましょう。
飲食店営業の許可があるキッチンカーは、「専用の手洗い設備」の設置が義務になっています。(参考:横浜市)
そこに、液体石鹸とペーパータオルがあるとより理想的です。
⑤電源がある
暑い車内で食品を適切な温度で保管するには、冷蔵庫や冷凍庫が必須です。
これらの機器を稼働させるためには、車のエンジンを止めている場合、「発電機」、「ポータブル電源」、「営業先で電源を借りる」といった外部電源が必要になります。
そのため、どのように電源をとっているか、冷蔵庫や冷凍庫が稼働している音がするか、を確認しましょう。
電源がなく、冷蔵庫や冷凍庫もないのに、要冷蔵の食品を扱っている場合は、適切な温度管理ができていない可能性があります。
常温品のみの販売やコーヒーのドリップだけなど、温度管理が必要な食品を扱っていない場合は、この項目は該当しません。
⑥衛生管理について客とコミュニケーションをとる姿勢がある
以上の点について少しでも疑問に感じた内容があれば、店主に確認してみましょう。
それ以外にも、衛生管理(HACCP)の取り組み、アレルギーの情報などを聞いてみるのもよいでしょう。
客からの質問に真摯に対応してくれるキッチンカーは、信頼することができます。
(番外編)万が一に備えて記録しておく
通常の飲食店と異なり、キッチンカーは翌日も同じ場所で営業するとは限りません。
また、レンタルキッチンカーやイベントでの営業など、単発での出店もあります。
このような場合、もし食中毒になって保健所に連絡したとしても、キッチンカーを特定できない可能性があります。
そのため万が一に備え、可能であればナンバープレート、お店の名前、レシートなどを記録しておくとよいでしょう。
終わりに
以上が、キッチンカーで食べ物を購入する前に見るべき6つのポイントです。
この記事では、キッチンカーに関係する食品安全上のリスクを紹介しました。
一方で、キッチンカーは通常の営業だけでなく、「買い物難民対策」、「フードロス削減」、「災害支援」など、その強みを生かした取り組みも多くあり、私たちの生活に欠かせない重要なインフラの一つにもなっています。
そして、これらの社会貢献をしっかりと行うための前提として、安全な食品の提供が必須です。
キッチンカーで営業する人は、通常の衛生管理に加え、この記事で紹介したようなポイントに注意して、食品安全に取り組んでいただければと思います。
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