海外でも日本と同じような方法で手洗いを行っているのかな?
手洗いは食中毒予防において、もっとも大切なことの一つです。日本では厚生労働省や様々な自治体が手洗いの重要性、方法を紹介しています。
日本の手洗いの方法は日本独自なのでしょうか?それとも海外でも同じように行っているのでしょうか?
そんな疑問にお答えできるよう、今回の記事ではアメリカと日本で飲食店向けに推奨されている手洗いの方法を紹介します。
それではさっそく見ていきましょう。
この記事でわかること
- アメリカと日本の手洗い方法の違い
- 参考になるアメリカの事例
アメリカで推奨される飲食店従業員の手洗いの方法
まずはアメリカで推奨されている手洗いの方法を紹介します。
アメリカではFDAのFood Codeが、飲食店向けの基準として参考になります。Food Codeをよく知らないという人は下の記事もあわせてお読みください。
Food Codeの「 2-301.12 Cleaning Procedure」に手洗いの手順が書かれています。
- きれいで温かい流水で手をすすぐ。
- メーカーが推奨する量の洗浄液を手につける。
- 以下に注意し、少なくとも10秒から15秒間、手を激しくこすり合わせる。
- 洗浄中に爪の中の汚れを取り除くことに特に注意する。
- 手や腕、指先、指の間をよくこすり洗う
- きれいな温かい流水で手を十分にすすぐ。
- 洗浄後、使い捨てタオルやハンドドライヤーで手を乾燥する。
基本的な手洗いの手順が書かれています。
日本であまり言われていないこととして、「温水」で手洗いを行うとなっています。
冬に冷たい水でしっかり手を洗う気にはなれないですからね。
また、Food Codeで手洗いに関連して気になる箇所がいくつかありましたので、あわせて紹介します。
従業員は、手の再汚染を避けるため、手洗いの蛇口のハンドルやトイレのドアの取っ手に触れる際に、使い捨てペーパータオルなどを使用してもよい。
2-301.12 Cleaning Procedure (C)
手を洗った後に、蛇口やトイレのドアに触れると、手がまた汚染されてしまいます。そのため、ペーパータオルを使って、手が直接触れずに蛇口やドアを閉めることが推奨されています。
従業員に手を洗うことを知らせるサインやポスターは、従業員が使用するすべての手洗いシンクに設置され、従業員に明確に見えるようにすること。
6-301.14 Handwashing Signage
この基準は、下ようなポスターを手洗い場所に設置し、従業員が手洗いする際に、見えるようにしなければならないということです。
Food Codeについては、下の記事も参考にしてください。
日本の推奨される飲食店従業員の手洗いの方法
次に日本の場合を見てみます。
アメリカのFood Codeと同等の法令は食品衛生法です。その中に手洗いの基準があります。
食品等取扱者は、爪を短く切るとともに手洗いを実施し、食品衛生上の危害を発生させないよう手指を清潔にすること。
食品等取扱者は、用便又は生鮮の原材料若しくは加熱前の原材料を取り扱う作業を終えたときは、十分に手指の洗浄及び消毒を行うこと。
食品衛生法施行規則 別表第17
手洗いを行わなければならないとなっていますが、具体的な手順までは書かれていません。
そこで、厚生労働省が公開している飲食店向けの衛生管理のガイドラインを見てみると、具体的な手洗いの手順が書かれていました。
- 流水で手を洗う
- 洗浄剤を手に取る
- 手のひら、指の腹面を洗う
- 手の甲、指の背を洗う
- 指の間(側面)、股(付け根)を洗う
- 親指・拇指球(親指の付け根のふくらみ)を洗う
- 指先を洗う
- 手首を洗う
- 洗浄剤を十分な流水でよく洗い流す
- 手を拭き乾燥させる
- アルコールによる消毒(爪下、爪周辺に直接かけた後、手指全体によく練り込む)
- 2度洗いが効果的です!(2~9までをくり返す)
かなり細かく書かれています。
アメリカとの大きな違いとして、手洗いを2回くり返すとなっている点です。
手洗いを2回くり返すことで、ウイルス量を10万分の1未満にすることができるため、この方法が推奨されているようです。たしかにノロウイルス食中毒の予防には有効かもしれません。
一方で、手洗いをやりすぎることによる、乾燥や肌荒れなどのマイナス影響も報告されています。
そのため、手洗いの方法を検討する際には、単に回数を増やして手をきれいにするだけでなく、手洗いによるプラスとマイナス両方の影響を考えなければなりません。
アメリカでも2回の手洗いが必要となる場面がありますが、限定的です。
また、日本の基準、ガイドラインには、アメリカのような「ペーパータオルで蛇口を閉める」といったことは書かれていませんでした。
一方、日本では施設の基準に、「手洗い設備の水栓は洗浄後の手指の再汚染を防止できる構造を有するもの」があります。これは、センサー式の自動水栓やレバー式、ボタン式の水栓のことです。やり方は違えど、両方の国で、手を洗った後の再汚染には注意しなければならないと言っているわけです。
今回は、日米の手洗い方法を比較しました。
食中毒予防のための「手洗い」の重要性はどこの国でも変わりがありません。しかし、手洗いの方法が違うのは興味深いですね。
この記事の目的は、各国の手洗い方法に優劣をつけることではありません。
よりよい方法や改善のヒントを得られるのではないか思い、比較しています。
今回両方の国の手洗い方法を比較して私が感じたことは、食中毒予防のための「手洗い」は、手をきれいにすればよいだけではなく。総合的に考える必要がある、ということです。
例えば、冷たい水しかでないシンクでは、だれも手を洗いたくありません。かと言って手を洗いすぎるのも、よくありません。
また、手洗いをいくら丁寧に行っても、そのあとに汚いものに触れると、手に菌がついてしまいます。
このように、手洗いのやり方だけに注目するのではなく、従業員の手を通して「微生物を食品につけない」という手洗いをする目的を達成するために、何がベストの方法なのかを、それぞれの施設で考える必要があります。
日本の飲食店で従業員に手洗い方法を教育する際にも、アメリカのFood Codeの参考にできる点は取り入れていただければと思います。
以上が日本とアメリカの手洗い方法の比較でした。
下の記事では爪ブラシの有効性について解説していますので、あわせて読んでみてください。
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