その瓶詰めレシピ大丈夫?自分で瓶詰めを作る際に気を付けるポイントを紹介

その瓶詰めレシピ大丈夫?自分で瓶詰めを作る際に気を付けるポイントを紹介

アメリカで、自家製の瓶詰食品で食中毒が起こったというニュースを見たよ。簡単そうだから自分で作ってみようと思っていたけど、実は危ないのかな?

2024年6月にアメリカのカリフォルニア州でボツリヌス菌の食中毒が発生しました。

家族の集まりがあり、そこで出された食用サボテンの「自家製の瓶詰」が原因で、10人が入院し、2名がICUで治療を受けました。

アメリカでは年間10~20人のボツリヌス菌食中毒が報告されており、その大半は自家製の瓶詰食品が原因です。

また、家庭で作ったものだけでなく、飲食店が作った自家製の瓶詰めでもボツリヌス菌食中毒が起きることがあります。

2023年にフランスで、飲食店が自家製造したオイルサーディンの瓶詰で食中毒がおきました。ラグビーワールドカップ中だったこともあり、患者は複数の国にまたがり、15人が発症、1人が死亡しました。

Jars with different canned vegetables

瓶詰食品は私たちの生活でよく目にし、賞味期限が長く、とても安全な食品のように感じます。

そして、流通している瓶詰食品のほとんどは、きちんとしたメーカーが科学的根拠に基づいて製造しています。そのため、ボツリヌス菌食中毒のリスクはほぼありません。

一方で、インターネットで検索すると、自家製瓶詰のレシピが多く公開されています。

簡単そうに見えるので、フードロスの削減や栄養面、経済性、利便性から、自分で瓶詰めしてみようと考える人がいるかもしれません。

また、最近ではシェアキッチンが普及し、自分で瓶詰食品を作り販売することも容易になりました。

さらに、すでに飲食店などの営業を行っている人も、売上拡大や地域振興のために、瓶詰食品を作ろうと考えるかもしれません。

このように、一見すると簡単に始められそうな瓶詰食品ですが、きちんとした管理を行わないと食中毒のリスクがあります。

アメリカの自家製瓶詰の歴史は日本より長く、参考となる資料が多くあります。

そこでこの記事では、CDCのウェブサイトとUSDAの「自家製瓶詰の完全ガイド」を参考に、自分で瓶詰食品を作る際のの注意点について紹介します。

目次

2つの方法が推奨されている

アメリカで推奨されている瓶詰の方法は2つあります。「Pressure canner」と「Boiling-water canner」です。

Pressure canner

「Pressure canner」は、圧力鍋を使って、100℃以上の温度で食品を殺菌する方法です。

Pressure canners
Pressure canner (USDA)

Boiling-water canner

「Boiling-water canner」は沸騰浴(100℃)中で食品を殺菌する方法です。

boiling water canners
Boiling-water canner (USDA)

その他の方法は推奨されていない

その他の方法として「Open-kettle canning」があります。

日本のレシピサイトなどでは、ジャムやピクルスなどで、この方法がよく紹介されています。

「Open-kettle canning」は、鍋で食材を沸騰するまで加熱し、瓶に注いで蓋をし、瓶内の熱で蓋を密閉する方法です。他の瓶詰めの方法より簡単なため好まれるのかもしれません。

しかし、USDAは「Open-kettle canning」は推奨していません。

理由は、加熱温度が十分でない点と、瓶に移す際に菌に汚染される恐れがあるためです。

Open-Kettle Canning
瓶に入れた後に殺菌工程がない「Open-kettle canning」は推奨されない。(USDA)

低酸性食品かどうかがポイント

USDAが推奨する方法に「Pressure canner」と「Boiling-water canner」があることが分かりました。この2つはどう使い分ければいいのですか?

瓶詰めする食品が「低酸性食品」かどうかで使い分けます。

酸性食品」はpHが4.6よりも高い食品です(酸性が低い食品)。野菜全般、肉類、鶏肉、魚介類、一部のトマトなどが含まれます。

一方「酸性食品」はpHが4.6以下の食品です。すっぱいレモン(pHは2程度)や多くの果物は酸性食品です。

Low-acid foods and acid foods
低酸性食品(pHが4.6より高い)はPressure cannerで行う (USDA)

低酸性食品を瓶詰めする際には、「Pressure canner」で行う必要があります。

一方、酸性食品であれば、「Pressure canner」、「Boiling-water canner」どちらの方法でも大丈夫です。

なぜ低酸性食品かどうかによって方法が異なるのですか?

「ボツリヌス菌が増殖できるかどうか」がポイントになります。

瓶詰食品で食中毒の原因となるのは「ボツリヌス菌」です。

ボツリヌス菌は熱にとても強く、100℃程度では、長い時間加熱しても殺菌できません。

しかし、ボツリヌス菌はpH4.6以下では増殖や毒素を作ることができません。

低酸性食品はpH4.6を超えるため、ボツリヌス菌が増殖できます。そのため、ボツリヌス菌を殺菌できる温度(例:120℃)で加熱できる「Pressure canner」を使う必要があります。

一方、酸性食品はpHが4.6以下のため、ボツリヌス菌は増殖できません。そのため、ボツリヌス菌以外の菌を殺菌できる温度(100℃)で十分なため、「Boiling-water canner」でも十分なのです。

ちなみに

低酸性食品でPressure cannerを使用した場合、レシピによりますが殺菌時間は20~100分程度です。

一方、低酸性食品をBoiling-water cannerで殺菌する場合は、7~11時間加熱する必要があり、現実的ではありません。

また、標高についても注意が必要です。

標高が高くなると、水の沸点が低くなります。すると、沸騰浴中で同じ時間加熱しているつもりでも、殺菌条件が十分でない場合があります。

例えば富士山の頂上では87℃で水が沸騰します。
自分の住んでいる地域の標高を念のためチェックしてください。

標高が高い都市で瓶詰食品を作る場合は、レシピの殺菌時間よりも、時間を増やす又は圧力を増やす必要があります。

信頼できるレシピだけを使う

CDCのウェブサイトでは、自家製の瓶詰食品を作る際には、USDAのガイドに従った方法のレシピだけを使うよう助言しています。

USDAのガイドには、「果物」、「トマト」、「野菜」、「肉・魚」、「発酵食品・酢漬け」、「ジャム・ジェリー」のレシピが紹介されているので参考にしてください(英語ですが分かりやすいです)。


日本の場合、個人が参照できる公的機関が発行している瓶詰めのガイドはなさそうです。

そのため、信頼できる機関やメーカーが紹介している方法で行うようにしてください。

インターネット販売など、営業行為として瓶詰めを行う場合は、pH4.6 以下の酸性食品であればこの手引書を、低酸性食品の場合は「HACCPに基づく衛生管理」を行う必要があります。

個人や飲食店の方が手軽に行えるものではなさそうです。

さらなる安全のために

CDCは次の自家製瓶詰食品の場合は、食べる前に一度加熱することを推奨しています。

  • 自家製のトマトの瓶詰
  • 自家製のトマトの瓶詰を含む食品
  • 低酸性または低酸性の可能性がある自家製の瓶詰

これらの瓶詰食品については、USDAのガイドに従って、適切に殺菌していれば安全です。

しかし、家庭で行う場合や、慣れていない営業者が行う場合には、適切な温度/時間で殺菌されないなど不確実な要素があります。

事例の紹介

2015年4月にオハイオ州でボツリヌス菌食中毒が発生しました。教会でのポットラック(参加者が食事を持ち寄る集まり)の食事が原因です。

患者は29人で、1名が亡くなりました。

原因となった食品は、自家製瓶詰のジャガイモを使ったポテトサラダでした。

自家製瓶詰ジャガイモは、低酸性食品ですが、「Boiling-water canner」で殺菌されていました。

また、瓶から出したジャガイモは調理に使用する直前に加熱されませんでした

Potato salad

このような背景もあり、CDCは食べる直前の加熱を推奨しています。ボツリヌス菌が作る毒素は、食べる直前にしっかり加熱すると壊すことができます


また、次のような状況は、有害な細菌に汚染されている可能性があるため、絶対に食べないようにしてください。

  • 容器が漏れている、膨らんでいる、膨張している。
  • 容器が破損している、割れている、または異常がある。
  • 容器を開けると液体や泡が噴き出す。
  • 食品が変色している、カビが生えている、悪臭がする

終わりに

アメリカほどでないにしろ、日本でも時々ボツリヌス菌食中毒が発生しています。

そして、その原因食品の多くは、自家製食品によって起きています

そのため、自家製瓶詰を作ろうと考えている人は、自家製瓶詰のリスクは自分が思っている以上に高いことを認識する必要があります。

きちんとした科学的根拠を持って、安全な瓶詰めを作るようにしてください。

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