飲食店での食物アレルギーの事故を防げ!CDCの調査結果を紹介

飲食店での食物アレルギーの事故を防げ! CDCの調査結果を紹介

アレルギー患者の43%が、外食でアレルギー事故の経験があるとニュースで言っていた。
飲食店でのアレルギー事故を減らすことは難しいのかな。

日本では、食物アレルギーの患者は増加傾向にあると言われています。

そして、アレルギー事故の多くが、外食で起きています。

「飲食店がアレルギー事故を減らすには何をすればいいの?」「どう対策すればいいか分からない」というような疑問を持っていませんか。

そんな疑問にお答えできるよう、今回の記事では、アメリカでの飲食店におけるアレルギー事故を減らす取組を見ていきます。

この記事では、アメリカのCDCのウェブサイトを基に解説します。日本とアメリカでは制度や社会背景に違いはありますが、飲食店での対策には共通する部分が多数あると思います。参考にしてください。

目次

表示が必要な「主要な食物アレルゲン」は9品目ある

まず復習ですが、日本でもアメリカでも、包装食品に表示が必要なアレルゲンが決められています。

日本でアレルギー表示が必要となる「特定原材料」は現在8種類ありますが、皆さんはすべて言うことはできますか。

特定原材料

えび、かに、くるみ(2023年3月9日から追加)、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)

このほかに、表示が推奨されている、「特定原材料に準ずるもの」が20品目あります。

アメリカで同様のものは、「主要な食物アレルゲン」(Major food allergens)と呼ばれ、アレルギー表示が必要になります。

主要な食物アレルゲンは現在9品目あります。

①乳、②卵、③魚(バス、ヒラメ、タラなど)、④甲殻類(カニ、ロブスター、エビなど)、⑤木の実(アーモンド、ピーカン、クルミなど)、⑥小麦、⑦ピーナツ、⑧大豆、⑨ゴマ(2023年1月1日から追加)

9 Major Food Allergens by FDA
Picture from FDA Food Allergies

アメリカにおける食物アレルギーの現状

アメリカでは食物アレルギーを持つ人は1,500万人と推測されています。子どもの場合、13人に1人の割合で食物アレルギーを持っていると言われています。

食物アレルギーの症状は様々ですが、中でもアナフィラキシーは生死にかかわる症状で、米国で毎年約3万件の救急外来受診、2,000件の入院、150件の死亡の原因となっていると言われています。

そして、食物アレルギーの事故は日本と同様、飲食店でよく起こります。食物アレルギー患者に対して行った調査では、3人に1人が飲食店でアレルギー反応があったと回答しました。

事故のうち45%において、食物アレルギーを持つ客が事前に飲食店に対しアレルギーがある旨を伝えていたにもかかわらず事故が発生しました。

また、78%の事例で、飲食店の従業員の誰かは、その食品にアレルゲンが含まれていることを知っていました。

このように、飲食店における食物アレルギー事故の多くは、適切に対処できれば避けられるため、飲食店における対策は非常に重要です。

飲食店はアレルゲンの表示義務はないの

日本と同様に、アメリカでも飲食店での食事は、アレルゲンの表示義務にはなっていません。

ただし、飲食店の管轄は地方自治政府のため、自治体によって取り組みは異なります

また、2022年に改正されたFDA(米国食品医薬品局)のFood Codeでは、アレルゲン対策が強化されたため、今後アレルゲン表示を行う飲食店が増えるかもしれません。

CDCの調査で分かったこと

CDCが飲食店の責任者、キッチン担当、ホール担当に対して、食物アレルギーについて聞き取り調査を行ったところ、以下のことが分かりました。

  • 飲食店の責任者や従業員は概して知識が豊富で、客の食物アレルギーに対応することに前向きであった。しかし、従業員の半分以上は食物アレルギーに関する訓練を受けたことがなかった
  • 訓練では、重要な情報(客がアレルギー反応を起こした場合の対処法など)がカバーされていないことが多かった
  • 10%以上の責任者や従業員は、食物アレルギーを持つ人が少量のアレルゲンを食べても大丈夫だと誤った認識を持っていた
  • その施設に食物アレルギー対応方針がある場合、そしてその施設での勤務経験が長いほど、従業員は食物アレルギーについて詳しい傾向があった。

飲食店で食物アレルギー事故を防ぐには

調査の結果、飲食店がアレルギー事故を防ぐには、以下の取り組みを行うことが重要だと分かりました。

従業員(特に勤務歴の短い従業員)に対し、食物アレルギーの訓練を行う。

多くの飲食店では、食物アレルギーの訓練を受けていない従業員がおり、食物アレルギーに関する重要な知識(例えば客がアレルギー反応を示した場合の対応)がありませんでした。

また、その飲食店での勤務経験が短い従業員の方が、食物アレルギーに関する知識が乏しい傾向がありました。

可能であれば、食物アレルギーを持つ客の料理は、別の設備と別の場所を用いる。

多くの飲食店では、食物アレルギー専用の調理器具や調理エリアがありませんでした。

専用の調理器具や調理エリアが利用できない場合は、食物アレルギーを持つ客の料理を調理する前に、作業台をしっかり拭き、調理器具をしっかり洗うことが重要となります。

メニューの原材料リストまたはレシピを準備しておく。

約4分の1の飲食店で、メニューの原材料リストやレシピが準備されていませんでした。

原材料リストは、どのメニューにアレルゲンが含まれているかを判断する上で重要です。

食物アレルギーを持つ客への対応計画を準備する。

食物アレルギーがある客への対応計画がある飲食店で働いている従業員は、対応計画がない施設で働いている従業員より食物アレルギーに関する知識がありました。

Food Codeのアレルゲンについて

最後にアメリカの食品安全規制のテキストであるFDA(米国食品医薬品局)の「Food Code」で食物アレルゲンに関する訓練がどのように書かれているか見てみましょう。Food Codeをよく知らない方は、以下の記事をご覧ください。

責任者は従業員に対し、食物アレルゲンを含めた食品安全について、職務に応じた適切な訓練を行わなければならない。

従業員は食物アレルゲンに関し、主要な食物アレルゲンについて、そしてアレルギーの症状について説明できなければならない。

Food Code 2-103.11 Person in Charge (O))

この項目に明記はされていないですが、アレルギー反応が起こった際の対応方法も訓練に含めることが推奨されています。(Food Code Annex 3. Public Health Reasons/Administrative Guidelines, 2-103.11 Person in Charge.)

いずれにせよ、責任者は従業員に訓練を行い、その職責(例:キッチン担当であれば交差汚染を起こさない調理方法)に応じた食物アレルゲンに関する知識を身につけさせなければならないということです。


以上が飲食店における食物アレルギー事故を防止するための取組です。

私自身CDCの記事を読んでいて驚きだったのは、事前に客がアレルギーがあることを伝えていたにもかかわらず、多くのアレルギー事故が起こっていることです。

食物アレルギーは、施設の責任者、キッチン担当、ホール担当のそれぞれが適切にコミュニケーションを行い対応する必要があります。

日頃から教育・訓練を行い、誤ったコミュニケーションが起きないよう、注意しましょう。

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