アメリカでは現在進行中の食中毒の調査状況を見ることができる

アメリカでは現在進行中の食中毒の調査状況を見ることができる

食中毒っていつも終わってからニュースになるけど、終わった食中毒の情報を知ってもどうしようもない気がする。現在調査中の食中毒の情報を知ることはできないのかな?

日本の場合、ある程度調査が終了し、原因食品や原因物質が確定した時点で公表されます。一方、アメリカでは現在進行形の食中毒であっても公表しているわ。

日本の場合、ニュース行政の発表は、証拠がある程度そろってから発表されます。その場合、食中毒の発生直後ではなく、ある程度時間が経った食中毒の終わりかけの段階で、消費者や食品事業者は情報を得ることになります。

この情報自体は「ノロウイルスの食中毒が起きたのか。そしたら自分の施設でも気をつけようかな。」というように注意する「きっかけ」にはなります。

しかし、本来のニュースや公表の目的、例えば現在進行中の食中毒の拡大防止や消費者に注意喚起する、という点では、有用さに欠けます。

一方、アメリカでは、調査中の食中毒であっても進捗状況が公表されており、だれでも見ることができます。

Discussing for investigation

この記事ではアメリカにおいて、調査中の食中毒がどのような形で公表されているのかを紹介します。

目次

FDAの食中毒の公表について

調査中の食中毒はFDAのウェブページで公表されています。

実際の画面を見たほうが分かりやすいと思います。下の画像がFDAのウェブページです。

List of 2023 Active Investigations

これは、2023年6月24日時点での、FDAが調査を行っている食中毒の一覧です。下の表は、上の英語の表を訳し、一部わかりやすく書き換えたものです。

公表日No病原物質原因食品患者数調査の状況食中毒の状況リコール遡り調査施設調査サンプル検査
2023/6/141157サルネラ調査中33進行中進行中
2023/6/141159サイクロスポラ調査中34進行中進行中
2023/5/241156サルモネラ生のクッキー生地18進行中進行中
2023/4/261152調査中アミガサタケ50進行中進行中
2023/3/11143A型肝炎ウイルス冷凍有機いちご9進行中進行中

食中毒調査の開始から終了まで、各段階の調査の状況が公表されています。

表の一番上の食中毒を見てみましょう。6月14日にウェブサイトに公表された、サルモネラ食中毒です。原因食品はまだ断定されていないようです。調査は進行中で、遡り調査に✔があることから遡り調査を行っていることが分かります。

「遡り調査」とは、患者から発症前に食べた食品の聞き取り行い、複数の患者が同じ食品を食べていた場合、その食品をさかのぼって調査することです。つまり、患者→小売店→卸売業者→製造者とさかのぼって調査を行っている最中ということです。

遡り調査が完了すると「原因食品」が分かり、それを作った施設を調査する「施設調査」、保管してあるサンプル品を検査する「サンプル検査」、さらにリコールが行われれば「リコール」に✔がつきます。

表の一番下の「冷凍有機いちご」の「A型肝炎ウイルス」の場合、すべてにチェックがついています。元の英語の表ではリコールの欄に「See Advisory」となっており、そこをクリックすると、リコール情報を見ることができます。

recall information

また、調査が終わった食中毒事件(Closed Investigations)については、下のようにアーカイブとして公表されています。

Closed Investigations

このような公表の取組は、2020年11月から開始しました。

調査の過程で、特定の商品や行動に注意が必要と分かった段階で、注意喚起が行われます。この取組により、FDAはよりリアルタイムかつ透明性のある情報提供を目指しています。

アメリカで起こっているすべての食中毒がFDAのウェブサイトで公表されるわけではありません。FDAのCOREチームが調査に加わる食中毒事件だけが公表されます。そのため、広域にわたる食中毒が基本的には公表されます。

また、USDAが管轄する食品(食肉など)に関連する食中毒の情報は、USDAのウェブページに公表されています。

さらに、各調査の詳細はCDCのウェブページなどにも公表されています。


以上がFDAが公表している現在調査中の食中毒事件の内容です。

このような情報が迅速に公表されると、消費者や食品事業者がすぐに行動をとることができ、被害の拡大防止につながります。

そのため、日本もこのような取組が行われるといいなと思います。

一方で、情報公開のリスクには注意が必要です。

もし行政が誤った情報を公表してしまうと、本当の食中毒の拡大や企業から訴訟のリスクがあります。

限られた証拠の中で、「公衆衛生の確保」と「誤った情報を出してしまうリスク」を常に天秤にかけながら、行政は情報公開のタイミングを判断しなければならない点が難しいところです。

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