「食品安全文化」は大きな食品工場向けのツールはたくさんあ
るけど、小規模な飲食店向けのツールはないの?
アメリカ、欧州、その他多くの国において、食中毒予防にはHACCPだけでなく、「食品安全文化」が重要であると考えられています。
それに伴い、組織の食品安全文化を評価するツールが多く公開されています。しかし、どれも大規模な製造業向けのように感じます。
一方、食中毒の約6割は飲食店で発生しています。そのため、製造業と同じように、「食品安全文化」は飲食店においても重要です。
それでは、「飲食店でどうやって食品安全文化を確立していけばいいの?」や「小規模な施設でも使える評価ツールは何かないの?」というような疑問を持たれているのではないでしょうか。
今回はそのような疑問に答えていきたいと思います。
CDCのウェブサイトに、飲食店向けの食品安全文化を評価するツールが公表されています。
今回はこのウェブサイトを参考に、飲食店がどのように食品安全文化を評価すればよいかを紹介します。
それではさっそく見ていきましょう。
食品安全文化とは?
復習になりますが、「食品安全文化とは何か」を確認しておきましょう。
飲食店における食品安全文化とは…
- 飲食店の従業員が共有する食品安全に対する価値観のことである。
- 価値観は、従業員の食品安全に関する行動に影響する。
- 食品安全文化が弱いと、食中毒発生のリスクとなる。
従業員の食品安全に対する「価値観」は「行動」に影響を与え、それは結果としてその施設の食品安全に影響を与えます。
そのため、強い食品安全文化は、その施設の食中毒発生のリスクを減少させます。一方で、弱い食品安全文化は食中毒発生のリスクを増加させます。
強い食品安全文化に必要な4つの要素
CDCが飲食店に対して行った調査で、以下の4つ要素が強い食品安全文化の確立に重要であることが分かりました。
- リーダーシップ:
– 責任者が食品安全のトレーニングを提供している。
– 責任者が食品安全に関する方針を定めている。 - 責任者のコミットメント
– 責任者が食品安全に積極的に取り組んでいる。
– 責任者が食品安全を優先している。 - 従業員のコミットメント
– 従業員は食品安全に積極的に取り組んでいる。 - 資源
– 食品安全に取り組むための十分な資源がある。
(例)十分な数の手洗い用シンクあり、石鹸などが供給されている。
また、別の調査では、トレーニングの提供、責任者が従業員に感謝の意を示すこと、そして責任者と従業員の間で日常的に双方向のコミュニケーションが行われていることが強固な食品安全文化を促進することが分かりました。
一方で、強固な食品安全文化の障害として、従業員が責任者と話をしたがらない、人員不足、スペースや資源の不足などがあります。
飲食店の食品安全文化を評価するツール
ここでCDCが公表した飲食店向けの食品安全文化の「評価ツール」を紹介します。
この評価ツールは、先程の4つの要素「リーダーシップ」、「責任者のコミットメント」、「従業員のコミットメント」、「資源」について、自分の施設の状況を評価することができます。
公表されているエクセルファイル(food safety culture tool)は4つのシートに分かれており、それぞれ以下のようになっています。
シート1 – 従業員に配布用
シート2 – 責任者の結果確認用
シート3 – 従業員の回答の集計用
シート4 – 採点ツールの実施例
もとのエクセルファイルは英語のため、日本語に翻訳したものを下からダウンロードできるようにしました。ぜひ活用してください!
- シート1を従業員に配布し、記入してもらう。(オンラインでも可)
- シート3のM列から、従業員の回答を入力していく。
- シート3左側のスコアシートに自動的に反映される。
従業員の回答をすべて入力したら、シート3の左下にある4つの項目と総合得点を見て、自分の施設の状況を評価します。
シート4が記入例になっています。この例では、「資源」と「責任者のコミットメント」が弱いことが分かります。
「6. 近くに手洗いシンクがあり、手洗いを行いやすい。」や「従業員が食品安全のルールを守っていない時、責任者は見て見ぬふりをする。」の評価が特に悪いのがわかりますね。
このツールを使用することで、以下のようなことが期待できます。
- 食品安全に関する従業員のある時点での価値観を確認する。
- 施設の状況の経時的な変化を見る。
- どのような取組が食品安全文化を強化または弱体化に影響しているのかを評価する。
以上が飲食店向けの食品安全文化の評価ツールの紹介でした。
このツールを使うことで、自分の施設の状況を客観的に知ることができます。
従来型の教育では従業員の「行動」を本質的に変えることは難しいと言われています。
そのため、真に従業員の行動を変えるためには、組織文化の一部である「食品安全文化」にまで踏み込む必要があるのではないでしょうか。
その第一歩として、施設の食品安全文化の状況を把握することが重要です。
このCDCのツールは、(アメリカではありますが)多くの飲食店に協力してもらい、検証を行い、作成されています。そのため、信頼性は高いです。
みなさんも、自分の施設の食品安全文化の弱い部分を確認し、改善してみてください。
それは、従業員の行動に変化をもたらし、最終的に食中毒リスクの低減につながります。
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