

カリフォルニア州では学校給食から「超加工食品」が排除されるというニュースを見ました。超加工食品の何がそんなに問題なのでしょうか。
日本ではまだそれほど注目されていませんが、最近アメリカでは「超加工食品(Ultra-Processed Foods)」が大きな話題になっています。



超加工食品の摂取と肥満や糖尿病などの健康問題との関連が指摘されており、政府や研究者だけでなく、消費者や食品業界を巻き込んだ大きな議論へと発展しています。
アメリカで始まった議論や規制の動きが、数年後に日本へ波及することは珍しくありません。
そこでこの記事では、超加工食品に関する最新ニュースを紹介しながら、
- 超加工食品とは何か
- なぜ問題視されているのか
- どのような議論がされているのか
について分かりやすく解説します。
アメリカの最新動向を知り、自社の商品や今後のリスクマネジメントを考えるヒントにしていただければと思います。
超加工食品とは
アメリカでは「超加工食品」について、法令上の統一された定義はまだありません。



現在、アメリカ連邦政府は超加工食品の定義づくりを進めています。
参考として、ニュースメディアのCNNは超加工食品を次のように説明しています。
Ultraprocessed foods are food products made with ingredients you wouldn’t normally find in a supermarket or your kitchen (such as certain individual nutrients, flavor enhancers, colors, additives, stabilizers); they might also be made using industrial manufacturing processes (such as extrusion, molding and preprocessing) not available to the home chef.
(筆者訳)
超加工食品とは、通常のスーパーマーケットや家庭では見られない原材料(特定の栄養素、香味増強剤、着色料、添加物、安定剤など)を用いて作られた食品であり、さらに押出成形、成形、前処理など、家庭では行えない工業的な製造工程を経て作られる食品である。
CNN (Ultraprocessed foods make up to 70% of the US food supply. How to reduce your intake, 2025/2/26)
具体例としては、ソフトドリンク、ポテトチップス、クッキーなどの菓子類、冷凍食品、インスタント食品、朝食用シリアル、チキンナゲット、ホットドッグなどがよく挙げられます。





なぜ超加工食品が問題視されているのですか?
アメリカでは肥満や2型糖尿病、心疾患などの慢性疾患が深刻な社会問題となっています。
こうした背景の中、多くの研究で超加工食品の摂取と健康への悪影響との関連が報告されています。関連が指摘されている疾患には、心血管疾患、2型糖尿病、肥満、がん、認知症などがあります。
さらに、アメリカでは包装された食品の約70%が超加工食品に分類されると推定されています。また、子どもたちは摂取カロリーの60%以上を超加工食品から得ているとされています。



つまり、超加工食品は一部の人だけの問題ではなく、多くのアメリカ人の食生活の中心を占めているのです。
こうした状況を受け、超加工食品の摂取を減らすことは、「Make America Healthy Again(アメリカを再び健康に)」政策の重要な柱の一つとなっています。


ただし、超加工食品の健康影響については、まだ議論が続いています。
多くの研究で病気との「関連」は示されていますが、超加工食品が病気の「原因」であると証明されたわけではありません。
例えば、
- 超加工食品そのものが健康に悪影響を与えているのか
- 超加工食品を多く食べる人の食生活全体の質が低いのか
- 所得や教育水準、食品へのアクセスといった社会経済的要因が影響しているのか
といった点については、まだ完全な結論は出ていません。
そのためアメリカでは、「超加工食品は健康被害の主な原因なのか」という点をめぐり、研究者、行政機関、食品業界の間で活発な議論が続いています。


タバコと超加工食品の類似点



超加工食品をめぐる議論では、健康影響だけでなく、「食品企業がどのように商品を開発し、販売してきたのか」も大きなテーマになっています。
1980年代になると、たばこ業界の大手企業は加工食品事業への進出を進め、多くの食品メーカーを買収しました。そして、たばこの開発や販売で培った技術やマーケティング手法を食品にも応用したと研究者らは指摘しています。
“The very technologies that were used to figure out how to optimize the addictive properties of nicotine using added sugar and artificial flavorings — that core technology was transferred from the tobacco industry to ultra-processed food development,” Schmidt says.(略)
Her study looks at the development of Lunchables, and how Philip Morris applied the same flavor technologies used to make lower-nicotine cigarettes more palatable to creating lower-fat cheeses and processed meats.
「砂糖や人工香料を加えることで、ニコチンの依存性を最大限に高める方法を見つけ出すために使われていた技術――その中核となる技術が、たばこ産業から超加工食品の開発へと移転されたのです」と、シュミット氏は語ります。(略)
彼女の研究では、子ども向けの人気商品である Lunchables の開発過程が分析されています。その中で、フィリップモリス(世界最大のたばこメーカー)が、ニコチン含有量の少ない紙巻きたばこをよりおいしく感じさせるために用いていた風味設計技術を、低脂肪チーズや加工肉製品の開発にも応用していたことが示されています。
NPR (Big Tobacco hooked us on ultra-processed foods. It might teach us how to cut back, 2026/6/9)


The cigarettes business also informed marketing strategies for ultra-processed foods, researchers say. (略) For consumers worried about health, tobacco companies used to sell so-called light cigarettes.(略)
“They applied the same strategies to developing light and reduced food products with the express goal of retaining customers who might otherwise stop consuming some of their products, such as cheeses and other items that customers had concerns about due the health harms”
研究者らによれば、超加工食品のマーケティング戦略にも、たばこ産業の手法が反映されていました。(略)健康への影響を気にする消費者向けに、たばこ会社はかつて「ライトたばこ(Light Cigarettes)」を販売していました。(略)
「企業は同じ戦略を食品にも応用しました。つまり、健康への悪影響を懸念してチーズなどの製品の購入をやめてしまうかもしれない顧客をつなぎ留めるために、『ライト』や『低脂肪』といった食品を開発したのです。その目的は、顧客を失わないことでした。」
NPR (Big Tobacco hooked us on ultra-processed foods. It might teach us how to cut back, 2026/6/9)



たしかに「ライト」や「低脂肪」と書かれていると、健康に良さそうな気がして、ついつい買ってしまいます。


超加工食品が急速に普及した背景には、その収益性の高さもあります。
超加工食品の多くは、トウモロコシ、小麦、大豆など比較的安価な農産物を原料としています。
そこに香料、着色料、乳化剤などを加えて加工し、ブランド価値や利便性を付与することで、高い付加価値を生み出すことができます。
その結果、1980年代から2000年代半ばにかけて、多くの超加工食品が市場に投入されました。
さらに、先進国では市場が成熟しているため、近年は新興国市場への展開も進んでいます。



このような歴史的背景から、一部の専門家は、「超加工食品はかつてのたばこ問題と似た構造を持っている」と主張しています。
肥満は本人の責任?
超加工食品は、脂肪、糖分、塩分、炭水化物などが高いレベルで組み合わされていることが特徴です。
研究者の中には、こうした食品は脳の報酬系を強く刺激し、食べ始めるとやめにくくなるよう設計されていると指摘する人もいます。



たしかに一口のつもりが、一袋食べてしまったことがあります。
実際、近年の研究では、世界の子どもの約12%が超加工食品への依存状態にある可能性が報告されています。
従来、肥満や生活習慣病は「食べ過ぎ」や「運動不足」、あるいは「自己管理の不足」が原因であり、その責任は個人にあると考えられてきました。



しかし近年、アメリカでは異なる見方が広がっています。
その考え方とは、「問題は個人の意志の弱さではなく、過食を引き起こしやすい環境にある」というものです。
超加工食品は強い嗜好性を持つよう開発されており、子どもの頃から消費習慣を形成しやすいと指摘されています。
そのため、一部の専門家は、肥満や食事関連疾患の増加を個人の責任だけで説明することはできないと主張しています。
Industry’s message has always been that it’s a lack of individual willpower that keeps people from “eating just one,” Faber said. Americans swallowed that message for decades, guiltily convinced their growing waistlines were due to wanton overconsumption, he said.
“It’s not consumers who are to blame for the rise in obesity and diet-related disease. It’s the food,” Faber said. “There’s never been a more important moment for nonprofits to team up with scientists and other experts and help consumers avoid ultraprocessed foods that have been engineered to be literally irresistible.”
ファーバー氏は、「食品業界はこれまでずっと、『食べ過ぎるのは本人の意志が弱いからだ』『一つ食べたら止まらないのは自己管理ができていないからだ』というメッセージを発信してきた」と述べています。そして、多くのアメリカ人は何十年もの間その考えを受け入れ、「太ってしまったのは自分の食べ過ぎが原因だ」と自分を責め続けてきたと言います。
しかしファーバー氏は、「肥満や食事に関連する病気が増えている原因を消費者のせいにするべきではありません。問題なのは食品そのものです。」と主張します。さらに、「今ほど、非営利団体が科学者や専門家と協力し、消費者が超加工食品を避けられるよう支援することが重要な時代はありません。なぜなら、これらの食品は人が抗えないほど魅力的になるよう意図的に設計されているからです。」と述べています。
CNN (Ultraprocessed food scientists say Americans are ‘fed up’ with industry and government inaction, 2026/6/6)
もちろん、この考え方には反対意見もあります。
肥満や健康状態には、所得、教育、運動習慣、家庭環境など多くの要因が影響するため、超加工食品だけに原因を求めるのは単純化しすぎだという指摘もあります。
それでも現在のアメリカでは、「肥満は本人の責任なのか、それとも食品環境の問題なのか」という議論が活発に行われています。
この構図は、かつて「喫煙は本人の選択の問題」と考えられていたものが、「依存性のある製品とそれを促進する環境の問題」と捉えられるようになった、たばこ規制の歴史とも重なります。



超加工食品は今後タバコのように取り締まられる可能性があるのですね。



超加工食品をめぐる議論の本質は、食品の栄養や健康影響だけでなく、「健康被害の責任を誰が負うのか」という社会全体の考え方の変化にあるのかもしれません。


おわりに
今回は、食中毒の話から少し離れて、アメリカで議論が活発化している「超加工食品」について紹介しました。
この記事では超加工食品に否定的な意見を中心に取り上げましたが、「超加工食品=悪」と単純に考えるべきではありません。
実際、超加工食品には
- 安価で入手しやすい
- 保存性が高い
- 調理の手間を減らせる
- 食品安全性を向上に貢献する場合がある
- 栄養強化が可能
といった社会的なメリットもあります。
そのため重要なのは、「超加工食品は良いか悪いか」という二元論ではなく、その利益とリスクの両方を理解することです。
また、超加工食品をめぐる議論の本質は、食品そのものだけではありません。
消費者、研究者、行政機関が「健康被害の責任を誰が負うのか」「食品企業はどのような役割を果たすべきなのか」を問い直している点にあります。
今後、アメリカで進む規制や消費者意識の変化は、日本の食品業界にも影響を与える可能性があります。



食品事業者の皆さんは、「超加工食品は本当に有害なのか」だけでなく、「政府や消費者が超加工食品をどのように捉え始めているのか」という視点からも、海外の動向に注目しておきましょう!









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